芳秀 両国やみ
大判錦絵 35.8×24.8 cm
落款:一旭斎芳秀画 板元:伊勢屋兼吉 名主双印
所蔵:酒井コレクション
絵師の芳秀は、初め国芳門のち文久年間から菊地容斎門に転じて歴史画に画風を変更し、雪窓号で作画した経歴の持ち主である。それ故か、錦絵の作品はあまり見かけない。だがその少ない作品中、掲出した「両国やみ」の一図は、彼の技倆の凡庸でないことを語り、また国芳系の末期歌川派における近代性の継承という現象を、まざまざと示してくれます。夜の桟橋に、提燈を持って立つ芸者を描いたものですが、この絵には川風の動きと、陰影および光の揺曳とを表現しようという意図が明確に現われています。薄墨つぷしの空に、左上方斜めに刷いた雲は、いささか説明的ですが、強い風の方向を示す効果はあり、シルエーその波が風に吹き送られてくる描写は印象的です。そして橋板の上に、提燈の光が、底の円形部分だけ残して映じている感覚は、師国芳が百人一首で試みたものをさらに徹底させた感があります。消化しきった洋風とはいえませんが、新しい絵作りへ注いでいる意欲が好ましく感じられる作品です。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada

芳秀 両国やみ jpskunisada63
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