市川男女蔵の関取雷鶴之助と二代大谷鬼次の浮き世土平 写楽
大判錦絵37.5×25.0cm
落款:東洲粛寫渠画
板元:蔦屋電三郎極印
所蔵:ギメ美術館
この作品の役名考証は吉田膜二氏によるものです。従来男女蔵の富田兵太郎と鬼次の川島治部五郎または浮き世土平といわれてきましたが、まず男女蔵の鬘が第35図のものと違って、車饗という荒事や力士とか、力を象徴する鬘をつけているのは富田兵太郎の侍には用いませんし、そのうえ袴もつけず脚絆をつけていますので、この役名は辻番付に見える関取雷鶴之助とすべきとしました。鬼次の方も第34図のものと比較しますと、月代がないので川島治部五郎とはできないと断定を下しました。鈴木重三氏は吉田氏のこの説を踏襲しつつも、男女蔵の力士が両刀をたぱさんでいる点がいささか解せないといっています。
それにしてもこの絵の構図は奇抜で、尻を出した姿には定九郎をおもわせるものがあり、図中四本の刀の配置がリズミカルで、そのなかに二人の人物がまとめられ、美しい歌舞伎美を表現しています。この図の落款は向かって右上部にありますが、東京国立博物館の同図の落款は左やや上部にあります。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku