三代豊国(国貞) 誂織当世島・金花糖
大判錦絵 揃物 36.1×24.2 cm
落款:庖需豊國画 板元:都沢 名主単印
所蔵:静嘉堂文庫
何か縞模様がはやることがあったか、あるいは製造元が宣伝をこめて絵師にあつらえたか、この題名のシリーズは、いずれもバックをとりどりの縞模様で潰し、前面に美人半身像を配しています。国貞が豊国を襲名した弘化二年から三年へかかる頃の作です。美人の顔が、やや後代豊国が慣用するタイプに近寄っていますが、まだ若やいだ気を宿し、切れ長の、まつ毛の密生した眼が、鮮明な印象を与えます。本図のバッタの縞柄は矢絣。やや品をもつ婦人の着物だけに、前景美人の屁もこの柄に合わせた感があります。手にした皿に入れた魚形のものは金花糖と見ました。『守貞漫稿』の菓子の条に、「白砂糖を練り喀形を以て焼き、而後に筆刷毛にて彩を施し、鯉鮒うど竹の子蓮根其他種々を製します。真物の如し。号けて金花糖と云」とある砂糖菓子が、この絵にあてはまります。美人の膝越しにこれをせがむような子供のポーズが、さらにこの想像を裏付けます。生活の一コマが画材化された好図。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada