英泉 浮き世四十八手・身仕舞いの手
大判錦絵 揃物 38.3×26.2 cm
落款:渓斎英泉画 板元:松村辰右衛門 極印
所蔵:酒井コレクション
英泉は大首絵の美人画シリーズを多く描いていますが、ほとんどが一人を対象とし、二人の組み合わせを描いたのは、このシリーズのみです。文政初年、彼のわりに早い時期の作に属し、若さと張りと、そして二人の組み合わせという条件からくる構図の工夫とで、はなはだ迫力をもつ作品揃いとなっています。何枚作られたものか不明ですが、本図の他には、「夜をふかして朝寝の手」(第217図)「ひいきをたのしみにみる手」など七図を知っています。
本図は中でもすぐれていて好ましいです。岡場所の女か、くずれた美しさを持つ遊女が半裸で化粧を今しもすませ、合わせ鏡で襟足を点検しています。うしろに、姉女郎でもありましょうか、懐紙をもった弁慶縞衣裳の女が、何か注意を与えています。二人の視線のゆくえは鏡面内で一致し、動きと奥行きのある構図を作っています。前の女の二の腕の手拭いは、国貞の作でも見た情人の名を入れたいれずみを隠したもの。脂粉の香が鼻をつくような嬌艶美を盛った作品です。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada