針仕事 歌麿
大判錦絵 三枚続 右38.2×25.3cm 中38.1×25.5cm 左38.6X25.4cm
落款:歌麿筆
板元:上村与兵衛
所蔵:東京国立博物館
三枚続きの画面に、針仕事をする女性たちを中心に、娘、少年、そして赤ん坊を配して、よく家庭生活の一情景を描き出しています。ことに左図の膝に赤ん坊がまつわりつくほ親の姿が見事です。そして布の寸法を合わせようとする二人の女性の前に猫をからかう少年を、後方に虫腹をもつ娘を配して、その女性たちの距離をあらわそうとした構図法は、従来の歌麿の群像にみられない工夫が感じられます。しかし中央の年増の乳もあらわな着付けや、右の立て膝した女性のあらわな足の部分の描写がやや観念的であるため、やや画趣を異にするものとなっているのがおしまれます。寛政の改革による浮世絵に対する圧迫によって、一般家庭の風俗に題材を求めながら女性美を描こうとする考想が強すぎた結果といえましょう。しかし、それぞれの衣服の色彩で、その年齢層をあらわそうとした配色の美しさは成功しています。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro