風流三幅対・難波屋おきた 豊国
大判錦絵 揃物 34・0×24・0cm
落款:豊國書(画)
板元:和泉屋市兵衛
所蔵:東京国立博物館
豊国は、版画技法の効果的運用について、探求心をとみに燃やした時期があったようであります。この風流三幅対はその早期の作。寛政三美人の難波屋おきた・富本豊雛・高島おひさを右からこの順に配した三枚組み物ですが、その左右のおきたとおひさを対比させてみました。構図法はもちろんですが、豊国はそれ以上に、両女の衣裳や好みの差異等の対踏性を、かなり意識的に表現しています。右のおきたは黒地の細かい絣模様の齢の着付け、左のおひさは同じく絣ながら薄紅地に大柄な十字の模様をつけます。帯は右が鴛賓切れ風の古風な地模様に対し、左は舶来のエキゾチックな更紗模様。片方が朱の茶托をもてば、他方は黒塗りのそれ、と対応は相当顕著であります。彩色は淡く水彩画風に摺り出され、版の重ね摺りにより、薄物を透かして白い肢体のすけて見える表現が、豊国の版画への広い理解と豊かな造型感党とを鑑賞者に伝えます。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni