役者舞台之姿絵・正月屋 豊国
(「花菖蒲文禄曾我」寛政六年五月都座)
大判錦絵 三枚組 揃物 37・0×24・0cm
落款:豊國画
板元:和泉屋市兵衛 極印
所蔵:12図・ボストン美術館
この三枚は続き絵ではありませんが、同一戯曲中の人物と考証され、構図も何か呼応し合う気分をもつので併陳しました。寛政六年五月都座『花菖蒲文禄曾我』の人物で、11図は三代沢村宗十郎の大岸蔵人、12図は三代坂田半五郎の藤川水右衛門、13図は二代坂東三津五郎の石井源蔵。それぞれ捌き役の義人、強悪な敵役、悲命に発れる実方等の役所が巧みに描き分けられています。絵本番付によると、蔵人と水右衛門が祗園町で碁を打つ所へ蛇が現れる場面が11・12図に相当するらしいです。温和だがシンの強い宗十郎の振り返ったポーズに動感があり、服装や扇など、写楽のこの同一役大首絵と比較すると興味が倍加します。半五郎の憎体な、しかし何か線の細い芸質もよく表現され、怪奇な構図は「蛇侍」の異称が与えられています。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni