男女図 湖屯斎
双帖絹本署色各85.0×31.8cm
落款:法橋湖龍斎画
所蔵:熱海美術館
紫色の絣の振袖を粁た美人と、茶色の長羽織をつけた若衆の画像を、それぞれの幅に背景もなく描いた二幅対の秀作です。浮世絵師で肉筆画に長じたものは、例外なく人物の着衣を描くことに巧みです。懐月堂。宮川長春、勝川春章、葛飾北斎と、それぞれに画風はことなりますが、衣裳模様の描出に凡川ではありません。本図の筆者湖竜斎も、版叫の連作『雛形若菜の初模様一で充分にその修業を積んでいます。女の明るく華麗な装いと、男の渋く小粋な衣服の収まり合わせ、二幅の対比を考慮に入れながら、おそらくは当時のトップモードであろう洗練された衣裳美を描き示しています。
両図とも落款は「法橋湖龍斎画」、印章は「正勝之印」の白文方印が捺されています。前図と同じく、法橋位叙任後の晩年の作です。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu