東海道五拾三次之内2番目 川崎宿 かわさき Tokaido53_02_Kawasaki 画題:「六合渡舟」 現在の神奈川県川崎市で、品川から9.8キロメートルで川崎の宿に達する。
絵はこの川が東京都と神奈川県との境、この宿に入る手前の六郷川の渡しが描かれている。漸く東海道もここへきて野趣豊かとなる。前景は六郷川、今、渡し舟が旅人を乗せて対岸へ向かっている。対岸は川崎宿、右手に遠く富士山が見える。川の藍と遠景の濃い色彩が画面を引き立てている。
渡し舟と対岸に舟を待つ人物が描かれているが、この描写が見事である。一点のすき間もない簡略な、それでいて雰囲気をかもし出す筆致は広重独特のものである。竿をつっぱった船頭の描写が特に巧みである。六郷川は、多摩川の下流の別称で、多摩川が荏原六郷を流れる時にこの名となる。もと東海道にはここに橋があったが、武田信玄の率いる甲州勢が攻めよせた時、北条方がここの橋を焼き落として甲州勢をせき止めた。その後、徳川家康の時代に橋は復元されたが、元禄年間の洪水に流失し、以後は橋渡しになったという。
歌川 広重 Hiroshige Utagawa