おし絵形 春駒 春英
大判錦絵 揃物 38.5×25.8 cm
落款:春英画 板元:西村屋与八 極印
所蔵:酒井コレクション
栞形の題簑に「おし輪形」と題し、娘道成寺、吉原雀、葛の葉、枕獅子、布晒、それにこの春駒などの所作事を大判錦絵に作っています。春英の新工夫であったらしいです。まねごとのはやった浮世絵界で、これには類作が出なかったのをみますと、あまり評判にもならなかったというのか、春英の独り芸におわってしまったようです。押し絵(貼り絵)といって人物などを布地で作り羽子板などに貼装して、半肉彫風の写実味を出したものからのヒントで描いたのでもありましょうか。寛政中の作と思われます。
このころ春英は師匠春章なきあと、勝川派の中心となりて、作品も多く活躍しています。その試みの一つでしょうが、実在の芸人の誰それが興味の的であったこともあって、主題への関心もなかったのでしょう。だが至極平而的な感じで、背以もありませんので、色あせるとばらけてしまいますけれども、掲出図のように美麗だと何はともあれ好感のもてる作です。
勝川春英 Katsukawa Syunei