国貞 吉原七小町・雨こひ小町
大判錦絵 揃物 36.9×25.4 cm
落款所蔵庖需國貞両 板元:若狭屋与市 極印
静嘉堂文庫
七小町とは、平安朝の佳人小野の小町にまつわる挿話・俗説が、いつか七種にパターン化されて民間に親しまれ、画題ともなったものです。草子洗小町・雨乞小町・通小町・清水小町・関寺小町・鸚鵡小町・卒都婆小町の七をいいます。浮世絵には特に多く用いられ、その大部分が、江戸庶民らしい美人風俗の見立ての図様に置きかえられています。この図もその一つ。吉原の名妓の艶姿に七小町の俤をオーパーラとフさせた所が鑑賞の主眼となります。雨乞小町の原話は、天下早魁の際、小町が神泉苑で「ことわりや口のもとならば照りもせめさりとてはまたあめが下とは」の歌を詠み、その徳でにわかに大雨をふらせたという話。コマ絵は駿雨に波立つ神泉苑の景。柱に凭れる文政期美人の洗い髪は小町のおすべらかしの髪型になぞらえ、手にして見人る玉章は、和歌を記す短冊、そしてしどけなく引っかけた表服は十二単衣にそれぞれ見立てられています。模様の天翔る応竜が題材によく合い全体にスッキリとした新鮮な画調と色気とが、快い効果を見せています。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada