三代豊国(国貞) 歳暮の深雪
大判錦絵 三枚続 右35.8×24.9 cm
落款:国貞改一陽斎豊國画・國貞改二代豊國両
板元:川長 名主単印
所蔵:静嘉堂文庫
国貞の二代豊国襲名から、程経ぬ弘化頃の作品です。師名を尊重する自覚からか、画面は緊まりを見せて、気力が充実しています。後のマンネリズムはまだ現れず、三美人おのおのの姿態は呼応し合い律動感が宿っています。
お高祖頭巾と合羽で身支度を十分に固めた二美人のポーズを、一人は傘をすぼめ、他は一杯に広げて、それぞれ向かい風の雪道で行きなやむ状を描き分け、しかも両人のポーズの作る線が右から左へとうねりを見せています。そしてこの運行をとどめるかのように、左から来る美人が迎えに応じています。
住まいが近くなのか、傘もささず、前垂れを頭巾代わりにかぶり、手にした大徳利に酒を求めての、帰路か出がけかの姿らしいです。簡素な縞柄の衣裳とあわせて、いかにも庶民らしい生活の匂いがただよいます。そしてこの三人を、うねうねと続く雪路の稜線が巧みに連結させている効果も見逃がせません。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada