二代瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木と中村万世の腰元若草 写楽
大判錦絵37.3×25.1cm
落款:東洲斎寫南画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:リッカー美術館
富三郎は三代菊之丞(第9図 おしづ役)の弟子でした。その菊之丞は初め瀬川富三郎といいましたが、菊之丞を襲名しましたので、そのあと二代富三郎となったのです。師匠の芸風をよく受けつぎ、身振りや声色がよく三代菊之丞に似ていたといわれます。万世の腰元若草について評判記では「若女形上i十八席」とあって、あまり好評ではなかったようで、端役に類する役柄であったためとも思われます。
この絵の興味深い点は、なんといっても両役者の対照的な描写でしょう。顎骨のあらわに張った細長の顔の富三郎と、頬肉の豊かな太った丸顔の万世、襟元を軽く手でつまむ上品でやや気取った姿態の富三郎と、両手を前に、しかも腰元としての性格(主人に対する敬意の表情)をよく示す下向きに合わせたしぐさなど、みな対照的なものといえましょう。
万世の着物のグリーンの色は画面に爽快な感じを与えていることも見逃せない観点の一つといえましょう。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku