娘日時計・巳ノ刻 歌麿
大判錦絵 揃物 38.0×25.1cm
落款:歌麿筆
板元:村田屋治郎兵衛 極印
所蔵:東京国立博物館
本シリーズは、「辰ノ刻」から「申ノ刻」までの五図がわかっていますので、泰平の世の娘の昼間の生活を描いたものとされています。
「巳ノ刻」(午前十時)、見事に結い上がった髪型を喜ぶ娘を見つめるように、また自分で結い上げた髪に満足げな立つ女の表情を強調するために、歌麿は、顔の輪郭線をまったく廃して、錦絵の用紙の地色とバックの黄潰しとの差によって、それをあらわそうとしています。そしてこの図では、鼻の線までも廃して、紙の衷㈲から盛り上がらせて鼻をあらわす「きめ出し」という版画独特の技法を活川しています。さらに歌麿は仙絆の線も朱線として、色面構成の妙味で、重量感あふれる女性芙を衣現しようとしています。ここに従来の歌麿美人画になかった新しい女性美追求の姿を知ります。
立つ女性の両腕、また髪にさわる娘の手の描写などが、一見無表情とも思える女性たちに表情を与えているばかりでなく、この図に動きを与えています。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro