幌蚊帳 歌麿
大判錦絵 37.4×25.3cm
落款:歌麿筆
板元:上村与兵街
所蔵:シカゴ美術館
赤ん坊を寝かせようと、幌蚊帳にはいった母親の方が眠気に襲われた風情である。今日でも見受けられる日常生活の一場面を、歌麿は題材としています。
暖か味のある黄漬しのバックに、半円形にひろがる幌蚊帳の緑が美しいです。そして幌蚊帳をひろげる黄の竹の曲線が、この図をさらに美しいものとしています。
歌麿は、g府の禁令の束縛からこうした題材を描くようになったのですが、本図の母親の描写が自然なものであるためか、束縛を感じさせないものとなっています。
そして幌蚊帳の向うの娘の蚊帳にかくれた部分を描線で、帯の部分を黒の面で処理した描写法は、従来の歌麿の蚊帳図にみない描写であり、表現法であって、図に奥行きをもたせる新画法だといえます。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro