立美人 歌麿
絹本著色 87.4x22.2cm
落款:歌麿筆
歌麿の肉筆画については、総説でもふれたように、重要美術品に認定された作も多いですが、その真贋ということはなかなかむずかしいです。本図も、重要美術品に認定されている一幅で、伝来がはっきりしている貴重な作品です。
塵よけで髪をかくした女性が。口的地に到着したのか、扇子をくわえ、口傘を立てかけ、掻取してきた裾をおろして、しごきを締め直す風情は、しゃきっとした姿のなかににじみだす色気が感じられます。
肉筆画は、版画とちがって、その絵師の画技習練の程度や画才がじかに画面にあらわれるものです。顔の線と衣服の線の太さをかえて、図に一種のリズム感をだそうとする描写法の巧みさが、ここでもみられ、また描線内を平塗りする浮世絵師独特の彩色法を、歌麿も川いていることを知ります。本図は保存状態もよく、今描いたかと思われるほどで、歌麿の肉筆画の巧みさを知る作品といえなさい。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro