夜更け 春信
中判錦絵 28.7×22.2cm
落款:存信画 板元:不明
遊女が夜更けて床をたち、隣の部屋でうつぶせに寝人ってしまった禿の姿を兄出したところ、白無垢の寝着が鮮かに見る人の日を射ます。紙背から圧力を加えて画面の一部を浮き出させる技法は、”きめこみ”という用語で呼ばれ、本図のような衣服や積雪の状などを描くのに用いられます。何色もの色板を重ね摺りする錦絵は、その摺圧に耐えられる良質の和紙。奉書紙”を用いることとなりましました。厚手で腰の強い奉書紙は、”きめこみ”や紙面に凹部をつくる”空摺り”などの新技法をも許し、色面で埋めつくされた錦絵をより一層精緻なものに印象づけたのでしました。
襖に画かれる白梅の墨絵は、清楚な遊女の姿をたたえるのに奉仕しています。ここに見るかなり達者な水墨画法は、春信の画家としての経歴のうちに狩野派に研讃した一時期が存在することを、確かに保証してくれるものです。おそらく春信は、浮世絵界にはいる以前、すでに狩野家の画法に相当深く習熟していたことでしょう。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu