白象と唐子 春信
中判錦絵 27.9×20.6cm
落款:春信画 板元:不明
所蔵:商橋コレクション
黄色のバ″クに輪郭をとらせ、紙地を盛り上げて白象を浮き出させます。象の上には鉦を打つ中国の少年が乗り、施旗と軍扇を持つ二人の子供がつきしたがいます。異国情緒を楽しませる唐子の図は、春信が多く描くところで、彼の、そして時代のもつエキソティシズムヘの傾斜と愛好ぷりがうかがえます。
明清の版画に幼童の嬉戯する様を描く図が多いですが、こうした春信の版画も、なにがしかの影響を受けたものでしょうか。
江戸の人々が初めて象をまのあたりに見たのは、享保十四年(1729)のことでしました。その前年、交趾国(今のヴェトナム)の鄭大威という者が長崎へ二頭の巨象をもたらし、牝は長崎で死にましたが、牡は京都へ上り天皇、上皇の叡覧に供されましました。さらに江戸へ来て将軍吉宗がこれを見物、のち中野の象小屋でひろく一般に公開されたのです。象は寛延年間に死にましたが、江戸へ到着以来その評判は高く、工芸品の意匠図案となったり、山王祭の作り物に登場するなど、大いに親しまれたものだといいます。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu