東海道五拾三次之内11番目 三島宿 みしま Tokaido53_11_Mishima 画題:「朝霧」 現在の静岡県三島市で、箱根から、14.8キロメートル下った宿場が三島である。
ここから岐れて天城越えをして伊豆下田をへ至る下田街道が発しているが、東海道と下田街道との分岐点に三島神社がある。この絵はその三島神社の鳥居前、早や立ちの旅人を描いて五十五枚中の準役物といわれる佳作である。
廻し合羽にくるまるようにしている馬上の旅人は、まだねむ気が残っているのか、あるいは朝寒か笠の下にうつ向いている。駕篭の旅人も腕を組んでいる。薦にくるまった旅人も見える。そしてこれらの旅人とは反対に街道を下る荷を担いだ旅商人の姿。この一群の旅人に焦点を合わせ、他は一切、背景の神社の鳥居も町並みも、すべて藍と鼠の朝霧の中に模糊としてかすんでいる描写の技巧は、木版画独特のボカシの技術を活用して成功している。ことに、霧の中に遠く影が消えようとしている笠に杖の人と二人の人影はまことに旅愁を思わせる。
歌川 広重 Hiroshige Utagawa