動居番付をみるニ美人 政信
大々判紅摺絵 47.6×33.9cm
落款:万月堂丹鳥斎奥村文角政信画 板元:不明
所蔵:ヴィクトリア・アンド・アルパート美術館
弾そめや 思ふ芝居の 忍び駒
画賛としての和歌や漢詩などは、絵に対して芸術的には二つの形式があります。その一は詩軸に添えた絵(風景など)、いわゆる詩画軸であり、他は絵主で賛文を添えたものであります。浮世絵の版画では純粋に絵画の芸術性に覚めての描写ではないのでありましょうか、いらざるところにしかも駄洒落のような句を刻記して画趣をかき乱している場合がはなはだ多いようです。この絵の場合もそれでしょう。だが概念の混淆、それが日本人の民族的な資性であったとすれば、苦にもならないことであります。
図は市松の地文に花や鳥の大模様の羽織の女と梅に流水の輪もようの女とを写すが、中村勘三郎座の番付に眺め入り、また箱かつぐ若者に話しかける路上の景観をうつす。紅摺も後期になると数色の多彩色となり、いよいよ画様と線描が調整される。宝暦近い頃の作でしょう。
奥村政信 Okumura Masanobu