芳員 横浜見物図会
大判錦絵 37.3×25.4 cm
落款:一川芳員画 板元:上州屋金蔵 改印
所蔵:神奈川県立博物館
芳員は国芳門下では注目される人物です。一寿斎を号しましたが、一川号の作の方が多く目にはいります。開港当時から慶応年間にかけて横浜に住んだと伝えられ、その故か、外人生活取材の錦絵が多く、貞秀と並ぶ横浜絵作家です。ただ、異国人の顔貌描写に一律の嫌いがあり、しかもどこか日本人めいた面影を残して、一種の愛嬌があります。彼の横浜絵は異国人の行動や目を惹く器物を扱ったものが多いです。群像描写を好んだようですが、ここではむしろ個人や器物に焦点を置いた作品「横浜見物図会」に彼の技倆をうかがうことにしました。右半上部の「写真鏡」は現在の写真のことで、外国婦人の写真を紹介したものですが、むしろ美人画として鑑賞されます。右下半はアメリカの時計を写実的に描いた旨を「真写」の字で誇っているが、文字盤の数字は、いささか怪しいです。左半は外人の散歩姿。簡素なステッキを提げて、ぬうっと立った風貌が面白く、手にした葉巻の煙の形が何か不自然めく欠点はありますが、新奇な知識の報道役は十分に果たしています。
歌川 国貞 Utagawa Kunisada