ニ代坂東三津五郎の石井源蔵 写楽
大判錦絵35.7×24.3cm
落款:東洲粛寫集画
板元:双屋重三郎極印
所蔵:大英博物館
口をへの宇に結び、目をよせ、斜に構えた刀に、見得をきった一瞬を見事にとらえています。従来この絵は、敵藤川水右衛門を討ち取る敵討ちの場の石井源蔵を描いたものとされていましたが、鈴木重三氏はその誤りを指摘して。源蔵の妻千束とともにかえって討たれてしまう場面であると述べています。ほつれた饗髪から、悲壮な切り合いの模様がうかがわれます。白無垢の着物の地紋を空摺りで仕上げ、それに水色の襟と、撥色の帯を両肩から描き、下の部分にはこれらをさらにひきしめるように、脱いだ着物の黒とその裏の褐色が、おのおの快い調ぺにのって描かれています。そしてこれら全体をパックの黒雲母摺りが浮かび上がらせ、強い感銘を見るものに与えています。
この役は『評判記』では「上上吉」となっており、中はどの評判でしかなかったようですが、「若い男の善人の役」には適役であったと考えられます。三津五郎の家紋は「三つ大」です。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku