更衣美人 歌麿
絹本著色 117.0×53.3cm
落款:歌麿筆
所蔵:出光美術館
本図も重要美術品に認定されている作品です。この図とほとんど同じ構図が、彼の最晩年、文化期の作とされる「夏衣裳当世美人」中の「伊豆蔵仕入のもよう向き」で用いられています。そうしたことから本図も同時期の作かと思われます。
夏の日の外出から帰って、いそい・で帯をほどいて風をいれる女性の気持ちが、こちらまで伝わってくるような作品です。そして肩から落ちそうになった透かし綾の着物をおさえた左手の描写が、この図に生父を与えているばかりか、この女性のもつ色気までも描きつくしている。
文化にはいった歌麿の版画作品は、まったく様式化し、描線は硬く、配色の妙味にも欠ける画風となっていますが、こうした肉筆画を見ますと、やはり彼が当時の浮世絵界の主導権を握っていた秘密が明らかになります。描線はやや硬いですが、全体の構図および着彩の巧みさは、なお衰えていないことを知ります。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro