ニ代瀬川雄次郎の仲居おとわ 写楽
細判錦絵32.1×14.6cm
落款:寫楽画
板元:蔦屋重三郎極印
この作品は所在不明でしたが、今度その所在が知れ、現物を撮影することができました。このような理由から、保存状態は良くありませんが、あえて原色版にしました。槌色がはなはだしいですが、この作品は四枚続きの一枚であり、これらのなかのほかの作品の色を考慮して、各部分の色を書き出せば、畳は黄土色、背景の欄間の下方と床の上方に観世水の模様が描かれていますが、これは藍色でしょう。
序幕洲崎升屋の幕あきに「粂吉、浅香、芸者の拵え、……脇に小万の拵えにて……おとわ、仲居、前垂がけ……」とあり、この四枚続きの三人の女性の着付けが合致しています。ここで問題の薩摩源五兵衛がいて、ヒロインの小万が描かれていないのは注目すべきで、小万の芸者姿がこの組み物の中にはいって五枚続きで完成したものではないかと考えられます。この一枚の新発見を嘱望するものです。背景をうめつくした繁雑で騒々しい画面は、写楽芸術がもう動きのとれなくなったことを如実に物語っています。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku