雛形若菜の初模様・大かなや内白たえ 湖竜斎
大判錦絵37.9×26.0cm
落款:湖龍粛画 板元:(西村永寿堂)
所蔵:シカゴ美術館
吉田瑛二氏によれば安永五年ごろから天明二年ごろまでに描かれたというこの「雛形若菜の初模様」は、老舗の西村永寿堂を板元として出された湖竜斎最大のシリーズです。連年発表された総図数は九十点を超え、のちに鳥居清長がさらに十図を加えています。。若菜の初模様”とは、その年の正月にはじめて着る衣裳の模様という意味であり、各図とも吉原の遊女がモデルとなりながら、主役となるのは彼女らの着衣のデザインです。変化に欠け、類型的な図柄が目立つ連作ですが、衣裳の模様は一つとして重なるものがないのも、作品にゆだねられたこのような性格に由来しています。まさに最新のト″プモードを伝える衣裳雛形であり、風俗の流行が多く遊里から生まれた当時の事情からみても、人々は争ってこれを購い求めたことでしょう。企画の成功が、数年連続の出版を可能にしたのでしました。淡い灰色の地に生える紅色の衣裳が美しい本図は、石鉢の金魚をのぞき込む遊女と禿の風俗もめずらしく、シリーズ中の傑作の一つです。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu