駿州片倉茶園ノ不二 すんしゅうかたくらちゃえんのふじ The Tea plantation of Katakura in Suruga Province.
現在の静岡県を描いたもので、静岡はお茶の産地として今でも有名です。人物を描くことに長けた北斎にとって、茶園で働く人々は画材として魅力的であったでしょう。摘んだお茶の葉をかごに詰める者、運ぶ者、そして馬の背に乗せる者など労働する庶民とそれを見守るかのような富士。庶民の目で描いた北斎の温かさが伝わってくるような作品です。
富士の麓近くまで茶畑が続き、富士はその茶畑がそのまま山容となったかのように描かれています。つまり、「茶の富士」というわけです。
中景から近景にかけては、茶摘み姿、天秤棒で茶を運ぶ農夫、版元の商号を入れた腹掛けなどをつける馬で茶籠を運ぶ様を連ねて、お茶の生産風景を紹介する趣旨でしょう。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika