玉取り物語 無款(治兵衛)
大々判愚摺筆彩色 二枚統 各52.7×30.2cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:ウースター美術館
シカゴ美術館で開催された初期浮世絵展には、サンフランシスコのアヘンパッハから出品の図とウースター美術館蔵の本図が提示されていた。この物語は近世に好んで俗文学や絵本に取り上げられています。「大織冠」藤原鎌足についての古伝説をつづるもので、まことに荒唐無稽な脱話を版画にしたものであります。西村重長にも作があり「りうぐうたまとりのづ」と題している浮絵風であります。
掲出の図には署名も版元名も記してません。アヘンパッハ蔵と比べると人物の相貌に多少の違いはあるが、おそらく同一筆者によるものでしょう。師宣筆と伝承されたものから杉村正高を選別する作業の中で、この絵も杉村治兵衛筆と推定される一応の理由はあるようですが、慎重比考が必要でしょう。
杉村治兵衛 Sugimura Jihei