立美人 懐月堂安度
紙本著色 105.0×44.0cm
落款:日本戯畫月堂図之(安度印)
少々時代はさがるが、美人画(版画)の名手の喜多川歌麿の作品をみて、その容貌に比べて手が著しく小さく描いてあることであります。それは歌麿だけでもないのをみますると、かなり一般的に美人画に共通のものかも知れません。さきにあげた師政もそうでありました。
この安度の「立美人」では、大顔であり明るく健康な成熟した女性を写していますので、褄をとる手指の繊弱さがなんとも奇妙であります。ことに着衣描写は肉太の濃墨であり、いささか質のよくない顔料の濃厚なのを潤達に設色していますので、その全容を大らかに見ているかぎりでは、まさに懐月堂風の生彩を突々として発揚してみえます。つまりは日本美人画のもつ裸像ぬきのモデルによる衣裳美描写の特異相というのでしょう。
懐月堂安度 Kaigetsudou Ando