立美人 長春
紙本著色 90.5×35.0cm
洛款:日本繪宮川長春図
所蔵:大和文華館
佛ハ法をうり 祖師ハ佛をうる 汝八
五尺の饅を売て 一切衆生の煩悩を易す
柳緑花紅の 色々衆
水の面に よなく月ハ かよへとも
心もとめす 影ものこさす
右沢庵 八十三翁不白廊
これは不白の追賛であって、作品は長春の盛期になる傑作であります。長春は掛幅のほかには画巻の作製に熱意をこめていて、それには演劇関係を主題にしたものが多いようです。掛幅では床の問の掲揚品としての格調を予想してでもありましょうか、ずばぬけて気品を重んじた作柄が感じられます。この図はフリヤ美術館所蔵の「柳下に憩う美人」と双璧の画品であります。
線描に懐月堂ほどの誇張はなく、柔軟さに抑揚をこめて整理し、良質の顔料をもってする衣裳図文はややそこだけ卓出してしまう懐月堂とちがい、像容の全体を調和的に構成する。浮世絵師中ではまずその首位にいる肉筆画家であります。
宮川長春 Miyagawa Tyoushun