小倉山荘 政信
絹本著色 三ニ・四×48.n三cm
落款:奥村政信図
所蔵:東京国立博物館
かやぶきの屋根の板廂の上に「小倉山」とあります。藤原定家が洛西小倉山に別墅を設け、ここで案じては多くの和歌をのこしました。また「小倉百人一首」と称するものも、一説には定家の撰であるように伝えられています。
その伝承をもじって、いわゆる見立絵として描いたものでしょう。室内には若い男がシーツの上に腹ばいになうて煙管をつまぐり、秋雨にけぶる外面をながめています。そこへ紅葉の葉をつけた長柄の唐傘を若衆にさしかけさせて、色子が訪れてくる図様となっています。籬の菊が咲き乱れ、雲谷をへだてて落水をつくるなど狭い画面に盛り沢山な描き込みであります。政信は版画の技法開拓に大きな功績をたてた人ではある
が、一方には肉筆画に相当の技量をもっていて、少ないけれどもすぐれた画をのこしています。
奥村政信 Okumura Masanobu