ニ代市川団十郎の暫 清倍
大々判墨摺筆彩色 59.4×31.9cm
落款:鳥居清倍板元:江見屋吉右衛門
所蔵:リツカー美術館
清峯は清信図と明紀していますが、現存品は清倍の落款を有し、江見屋の板行であります。前掲の「象引」図は初代市川団十郎と山中平九郎の荒事名人公家悪開山の豪快な力争を写しています。そのすさまじさの描出が遇剰に先行して、空間的な造形など無視した意欲発動の作風は、清倍の独壇上で、跨張が誇張でなく、劇的なエキサイト感情を盛り上げた無類のできであります。
また暫は元祖団十郎が元禄十年正月、中村座「参会名護屋」での趣向、さらに正徳四年十一月「万民大福帳」で二代団十郎が暫の扮装性格を確立したと言われる。「鳥居二代目清倍図廳求五代目清峯画」として、七代目三升の加賀で模製したものがあります。原図は正徳四年出版でしょう。
「象引」「暫」両図の筆致には差格もあり、落款も同じ時点と解し薙く、時をはさんで数番作ったのでしょう。豊芥子の丹絵というのは一般名称で、その彩色には丹絵などに共通の印象の強烈を誘う素朴さがなく、絵になり遇ぎた恨みがあります。
鳥居清倍 Torii Kiyomasu