柏と鷹 無款(清倍)
大々判墨摺筆彩色 55.7×28.8cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:シカゴ美術館
鷹狩りが武家の厳冬の勇壮な行事であり、鷹匠があるとともに、その鷹の餌をかう御用達の小鳥屋もあるように、武家社会では愛賞され、その猛禽ぶりは武家の好みとして、中世にはよく描かれたようであります。直菴などの遺作中にみられます。近世初期の屏風絵にもあります。また平安時代にも画題となったらしく、扇面古写経の下絵デザインには、柏の木を中心に、根かたの草むらに兎、樹上にはこれをねらう一羽の鷹が写されています。
どうした好みか浮世絵にも鷹の絵があります。湖竜斎や無欺の版画にあるが、その先行作としては西村重長らに猿児をねらう図様が数檻のこっています。享保頃に何か中国あたりからの影響ではじまったのではあるまいか。掲出の図は豪快さでは随一の表現といえよう。柏の幹の形象描出も、鷹の羽毛の構成も、ほとんど写生を顧慮することなく大胆にやってのけ、わずかな筆彩でまとめ上げる稀有の作であります。
鳥居清倍 Torii Kiyomasu