吉原仲之町 無款(政信)
大々判紅絵 43.ニ×64.0cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:シカゴ美術館
吉原大門口から店の軒先きを連ね、「たばこ人いろく」の商人も交えて嫖客のぞめき歩くところ、浮世相子に浮世笠、衣紋坂を打って降りた若旦那、揚屋入りする道中姿の太夫、禿に袖ひかれる馴染などを透視画法で調整して描き上げる。それだけですませばよいものを、遠いところに田圃道やら森に落ちくる雁をそえたりして、統一空間性を乱しています。
このバースペクティヴの画法を一枚絵に摂入した最初は誰か、ワシントン大学のリー氏は研究していますが、その説では政信を「浮絵根元」など称することからそれにあてる考えを否定しようとしています。一家の識見といえよう。だが政信は浮絵に熱心で数多くの作例があります。この画法には大門口吉原とか、幾室もつづく酒楼、劇場内、町家の街なみが格好なために主題として多くみられます。それらの絵が明時代の中国画と関係が深いであろうことは、容易に比較検証できる。だが元禄頃にすでに「のぞき絵」と称するものがありました。
奥村政信 Okumura Masanobu