新製錦手猪口 豊重(二代豊国)
大判錦絵 揃物 38・5×26・0cm
落款:一龍寮豊重画
板元:西村屋与八 極印
豊重は二代豊国の前名。文政後半に作画が見え、当初は若いながらも引き締まった文政型美人を発表しています。ここに掲げるシリーズものの一図は、彼の良さのよく出ている作品で、保存もまた良いです。シリーズ名中の「錦手」は上絵付の磁器をいいます。粕の上にガラス質透明性の上絵具で、赤・紫・黄・青等華麗に彩色したものをいいます。こういう猪口が文政中期には一頃はやったらしい(豊国に似顔絵猪口があったことは第32図解説で既述)。その製造元あるいは販売店と版元が提携し、美人画に添えて宣伝をはかって、このシリーズは制作されたのではないでしょうか。二代豊国は謹直といってもいい筆致で描いています。桜花散る隅田川あたりの桟橋に、紫の曙染め衣裳の芸妓のたたずむ風情はいかにも浮世絵らしいです。
当図は制作時期からすれば前図の前に置くべきですが、構図の釣り合いから、ここに掲出しました。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni