四代松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛 写楽
大判錦絵38.1×25.4cm
落款:東洲粛寫棄画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:ネルソンーギャラリー・アトキンス美術館
この画面でまず目につくのが太い黒の襟の部分で、これと頭髪の黒で全体をまとめているといった感じです。それは背景の雲母摺り作品に一層の落ち着きを与えて、五郎兵衛の役柄表出に一役かっています。
五郎兵衛は、松下造酒之進の遺児宮城野・しのぶの姉妹の片腕となって、敵志賀大七を討たせようとする仁侠の魚屋で、鉢巻をして腕を組み煙草をふかす姿態は、その威勢のいい下町の心意気をよく表現しています。
四代松本幸四郎は、寛政元年(1789)「大上上吉」、同六年(1794)には「極上上吉」にのぽり、容姿・品位・音声・口跡ともにすぐれた役者で、世話物にも巧みで、特に捌役に特色があり、幡随長兵衛などが当たり役であった。このような役柄は五郎兵衛の役と似ていますが、この役については「立ち役極上上吉」と評されています。なお『似顔大全』にはこの図そのままのものを幡随長兵衛としてあるのは注目されます。
家紋の「三つ銀杏」は四代幸四郎まで使用したものです。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku