曾我五郎と御所五郎丸 写楽
間判錦絵32.2×22.2cm
落款:寫楽画
板元:蔦屋璽三郎極印
所蔵:リッカー美術館
工藤祐経を親の敵とねらう曾我十郎祐或と五郎時宗は、頼朝の富士の裾野の狩り場で復讐を遂げることができました。しかし兄祐或いは仁田四郎忠常に討たれ、弟時宗だけが切り抜けてきたところ、御所(頼朝の御殿に奉仕する)の五郎丸に行きあいました。五郎丸は頼朝の幕舎に討ち入らせては大変と、袖を解きはずした胴だけの鎧を着、草摺り(胴から下に垂れて脚を護るもの)も収まりはずし、頭から薄衣をかぷって待っていたところに五郎が来て、女と思って行きすぎたところを並ぶように身の横に平行になって組みつき、ついに五郎を生け捕りにしてしまうのです。『曾我物語』によると五郎丸は七十五人力の剛の者であったといいます。横からむずとくみついた五郎丸の服装など、よく故事と合致して描いてあります。
武者絵として緊迫した場面をこなし、両人の必死の動きがみるものに息をのませます。幔幕と二人物が交差する構図も抜群です。落款の「画」の字の「田」が大きくなっているのをみても寛政七年にはいってからの作といえましょう。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku