玉屋内若梅 歌麿
大判錦絵 36.3×25.1cm
落款:歌麿筆
板元:蔦屋重三郎 極印
所蔵:酒井コレクション
ピンクの梅花模様の打ち掛けに、若草色の小袖、黄地で黒の模様を織り出した幅広の前帯という豪華な衣裳の姿は、堂々とした女性美を示しています。本図と同趣向で作画された図としては「扇屋内逢莱仙」、「扇屋内花扇」とがわかっています。彼女らの美貌はもちろんですが、それぞれの凝った衣裳の美しさをも描いていますので、彼女たちの遊女屋主人の依頼で制作されたシリーズではないでしょうか。上に散らした「白むくの雪のうちより咲いでて名もかうばしき若梅の花」という歌も、最大の賛辞であって、私には先の作画意図が強く感じられます。
そして若梅の背後からのぞく正面向きの禿の描写が、この図に特異な趣きをかもし出しています。
寛政九年(1797)に新吉原から退籍している扇屋花扇が描かれていることから、この作品もそれ以前の制作であることを知ります。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro