武陽佃嶌 ぶようつくだしま Tsukuda Island in Musashi Province.
現在の東京都中央区佃の佃島を描いたもので、江戸時代大阪の佃村の漁夫が江戸へ移り、砂州を埋め立てた場所で、彼らの故郷にちなんで佃島と名付けられたそうです。佃島周辺で採れる海産物を使って作った煮物が「佃煮」は今でも有名です。本図は、藍の濃淡でつくられた美しい藍摺(あいずり)の作品です。東京湾に浮かぶ漁船がゆったりとした雰囲気を醸し出しています。
「上総ノ海路」「常州牛堀」に続いて、三枚目の舟と富士を対比する作品の紹介です。近景に七艘の舟、中景に石川島と佃島、そして遠景には富士が姿を覗かせています。
いつものように、三角形の相似形を見つける前に、富士と舟との違う観点からの結びつきをお話しします。描かれている七艘の舟のカーブする舳(へさき)や船頭の操る棹先が富士に向かっていることです。富士と舟とが見えない綱で結ばれているかのような構図なのです。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika