名所腰掛け八景・手鏡 歌麿
大判錦絵 36.2×25.8cm
落款:歌麿筆
板元:伊勢利
所蔵:高橋コレクション
寛政八、九年ごろの作といわれる茶屋の人父女性を八景にあてはめて描いたシリーズです。
本図は、画中の「風すずしそののしおりや難波かた」という文字によって、難波屋おきたをモデルとしたものと考えられます。前にも述べたように、当時の人気女性の中でもおきたは、歌麿好みの女性であったためか、彼女をモデルとした作品を十数種も描いています。また鏡を扱った作品も多いですが、同趣向の図「姿兄七人化粧」にくらべますと、この作品がやや散漫な印象を与えるものになっていることに父付くであろ 顔をやや突き出して鏡に兄入るおきたの表情は巧みに描かれ、はじらいを示したような手の描写も有効な働きを示していますが、衣服の線描がややデッサンの正確さに欠ける面があり、観念的な表現となっています。しかし顔の表桔や髪の生え際の彫りはますます精巧なものとなっています。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro