山姥と金太郎・盃 歌麿
大判錦絵 38.3×25.5cm
落款:歌麿筆
板元:蔦屋重三郎
所蔵:東京国立博物館
山姥というのは山の娼婦です。その山姥に育てられた金太郎が、後に成長して源頼光の四天王の一人、坂田公時となり、強力無双の武士となったという説話は、広く知られています。また山姥伝説は、謡曲、浄瑠璃、歌舞伎狂言にも取材されました。
山姥にかかえられた金太郎が、なみなみと盃に満たして飲む液体は何でしょうか。
丸々とふとった金太郎が上日づかいで母の顔を兄人ます。いかにも偉丈夫さを感じさせます。そうした金太郎をやさしく見つめる山姥の眉毛のぽさぽさとはえている様子や櫛‐も通りそうもない頭髪など、いかにも山奥に生活するもののたくましさが描き出されています。そうした印象を受けるのも、毛彫りの奔放な刀の冴えによりますので、今ではこれを彫った彫師名はわかりませんが、彼の険の協力がこの図を最高の作品にしたのだといえます。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro