三曲合奏 美信
中判錦絵 28.8×20.9cm
落款:美信画 板元:不明
所蔵:ボストン美術館
春信が旺盛な作画活動に従ったのは、錦絵が開発されて以後没するまでのわずか五、六年間に限られていましました。したがって、すぐれた門弟を育成する余裕もなく、直接的な後継者には恵まれませんでしました。わずかに春広(のち湖竜斎)と春重(のち司馬江漢)の二人のみが、春信様式の枠を抜け出ることに成功したにすぎません。その他の春信亜流の作家群のなかで、この駒井美信は伝存する作品も比較的数多く、やや個性的な画風を示すものとして注目されます。生涯の伝記についてはまったく不明で、春信に直接指示したかどうかも明らかではありません。版画作品のほか、若干の肉筆画も報告されています。
本図は美信の錦絵作品のうちで保存状態も良好の佳作と推奨しうるものです。香を焚く床の間の前で、三人の美人が、琴、三弦、胡弓を合奏する図ですが、図柄の配置に春信画に見るような緊迫した均衡感がなく、色彩もそれぞれに相殺しあって効果を減じています。やはり、どう岫辰口に見ても亜流作の域を脱け出るものではありません。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu