八百屋お七と小姓吉三 無款(政信)
大々判丹絵 55.3×29.0cm
落款:なし板元:村田屋治郎兵衛
所蔵:シカゴ美術館
「妙薬たむしの薬」の張り紙広告や、板に「地蔵開帳来ル正月四日ヨリ二月迄 当寺ヨリ………」とがあり、また「近日ヨリ中村座八百屋 四番つゝき 哥さいもん 姫風ハニリがなかの王子かな」とも記してあります。相愛する若き二人の恋に一途の道行き姿を大々判丹絵の堂々とした構成で描き上げたものであり、作風も彫りや摺りの技巧も一段と冴えた屈指の名作と言えよう。
「恋ゆへみをバこがすなる やをやのむすめお七こそ れんぼのやみのくらがりに ょしなき事をしいたして すぐにそのミハとらわれて うきめにあふぞあはれさよ とがのしだひをありゃうに 中あけよとありけれバ お七なくお七なく申よふ ゑんはいなものこのてらの 小しゃう吉三とみづからハ、こゆひをきりてちをしほり きせうをかいてとりかわし、まくらさだめぬそのうちに ……なみだにふししづむただ世の中にく恋のうきなハこれなりとうやまって申」とかき口説く。
奥村政信 Okumura Masanobu