東海道五拾三次之内35番目 御油宿 ごゆ Tokaido53_35_Goyu 画題:「旅人留女」 現在の愛知県豊川市で、吉田から10.3キロメートルで御油の宿に入る。
この宿場の夕暮時を描いている。ここで旅篭(はたご)をと、さしかかった旅人を宿の女が強引に自分のところに引きとめ、引きずり込もうとしているユーモラスな一情景である。
この引き入れのさまは写実で人物の表情もよく出ている。旅篭屋(はたごや)の中では、すでに泊まりをきめた旅の侍が、媼のすすめるタライで足をすすいでいる。この侍を引き入れた女であろう、頬杖をついて引き入れ中の留女の次の成果を見守っているのも面白い。飯盛女が一人、これも引き入れを見守っている。宿場の夕暮時の風趣満点で留女の喧しい声が聞こえているようである。
歌川 広重 Hiroshige Utagawa