雪中相合傘 春信
中判錦絵 27.2×19.8cm
落款:鈴木春信画 板元:不明
所蔵:シカゴ美術館
暗い夜空から霖々として舞いおりる純白の雪は、世の常のけがれをおおいかくし、みだりがましい物i日を吸いこんでは消してゆきます。その清浄と静謐に包まれた銀世界を、鮮かな対比を示す黒と白との衣裳に身を装って、二人の男女が静かにやさしい歩みをはこびます。降り積む雪をのせた傘の柄にかぼそい指を寄り添えて、見かわすともなく投げる恍惚の視線には、恋の幻影を確かな実像に代えようとする、恋人たちの一途な想いがこめられているようです。
浮世に直接題材を得て作画する通例の浮世絵師とは異なり、春信は伝統的な一題や古典和歌の抒情に取材します”見立絵”に、個性的な画境を開いた画家として知られています。春信の作品の一つに、雪の降る池のほとりに立ち、番のおしどりを見る相合傘の男女図があります。はしなくもこの図が知らせてくれるように、本図も漢画方面の好画題「雪中鴛鴛図」を兄立の原典として、ブラトニ″クな愛の詩を描き上げたものと思われます。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu