東海道金谷ノ不二 とうかいどうかなやのふじ The Fuji from Kanaya on the Tokaido.
現在の静岡県島田市のあたりを描いたもので、金谷宿は、大井川の西岸に位置する東海道の宿場です。江戸時代、橋がなく東海道の一大難所であった大井川は多くの浮世絵に描かれました。北斎もまた、ここで苦労する旅人を生き生きと描き出しています。自然の雄大さの前に苦労する人間の存在の矮小さを、独特の構図の中に描き出した作品です。
「身延川裏不二」を想起すると、身延道と東海道を入れ換えたような考案で、それ故、流れる川の表現を是非見せたいという北斎の意図が強く伝わってきます。ただし、富士の山容に険しい雰囲気はなく、富士の表の顔が描かれています。
手前の金谷宿と向こう岸の島田宿の間を流れる大井川は、かなりのウネリを見せており、この大河を渡ろうとする川越人足の心意気が描かれているというものです。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika