東海道江尻田子の浦略圖 とうかいどうえじりたごのうらりゃくず Shore of Tago Bay. Ejiri at Tokaido.
現在の静岡県富士市一帯の海岸田子の浦を描いたもので、もっとも富士山が見えるところとして有名であり、『万葉集』にも詠われています。本図は、東海道吉原宿の沖合からの風景といわれています。北斎は、近景に漁船と波を描くことで、裾野がすっと伸びた富士山をより印象的に見せています。北斎らしい雄大でかっちりとした風景画です。
東海道吉原宿の沖から、浜の塩焼きと富士を眺望する作品と思われます。田子の浦は、古くからの歌枕の地で、万葉の歌人山部赤人の「田子の浦ゆうち出でて見ればま白にぞ富士の高嶺に雪は降りける」や、大中臣能宣の「田子の浦にかすみのふかく見ゆる哉もしほの煙立やそふらん」などの和歌があります。これら和歌の景色をこの当時の風景と置き換えて描いたのでしょう。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika