初夢三幅対 豊信
細判三丁掛紅摺絵 31.6×49.1cm
落款:石川豊信筆 板元:上村吉右衛門
初夢三幅対、中・右・左と題簽にかいてあり、細判で三枚に裁断するところを、アンカットのままで保存した稀観品であります。新春の吉夢の随一を富士、ついで鷹、三が茄子と下世話に言う。今でもふと正月にはそのことを思い出すのだが、そんな夢をみた覚えはまったくません。
この図は左が六曲屏風の二扇を開いて鷹匠の若衆を写し、中央は床にかけた富士の幅を背にした遊女の立姿、右は茄子畑に胡蝶の舞う襖、手洗の縁先ちかく少女の懐中鏡で身づくろう図様で、背景は屋敷うちの一室となっています。だが三枚に切断してもそれぞれ独立の図様にまとまる巧緻さであります。
初夢や富士も衣紋の雲の帯
ゆめ噺し面影にたか朧月
夢噺し茄子もさし出る化粧顔
この頃「三幅対」の題号が流行しています。
石川豊信 Ishikawa Moronobu