役者絵 春章
大判錦絵 39.3×25.7 cm
落款：なし（壹印）
板元：不明
所蔵：酒井コレクション
三代沢村宗十郎の小松重盛と六代中山小十郎の長田太郎（「雪持竹振袖源氏」天明五年一一月中村座」
本図は中山小十郎扮する長田太郎と沢村宗十郎の小松重盛の舞台姿を描くものとされています。その歌舞伎の演出内容については、私は知るところがないのを遺憾とします。
だが大判錦絵の大画面に構成したこの二人の劇化された描出はまことに見事というほかありますまい。保存もまた完好というべきでありて、さすがに酒井家累代の識鑑が凝結」てこの佳品を存」えたと感心させられます。
この種の絵は細判などとちがって、一枚で完結しました。これこそ鑑賞のための歌舞伎図というのでしょう。むろん舞台図ではありますが、錦絵独得の湿潤で漆黒のバックに摺りたて、黄色の地上に二俳優のほかはわずかに大きな石の灯龍だけをすえて素材を簡潔にしたそれもいかにも張り子らしい軽快さですので、注意はこの二人の呼吸のあった一瞬のエキサイトしたポーズの緊張表現に集められています。
勝川春章 Katsukawa Syunsho
