三代森田勘弥の伊達姿 清倍
大々判丹絵 56.5×31.0cm
落款:日本畫鳥居氏清倍間
板元:伊賀屋勘右衛門
所蔵:シカゴ美術館
「丸にかたばみ」は森田座の紋、「絵師が座元に対する付合心で森田座にこんなすばらしい役者もいます、という意味で描いた美男絵である」(渋井氏)とし、これは三代森田勘弥であって、元禄十二年(1699)十一月森田座の太夫元、正徳二年(1712)春四代坂東又次郎に太夫元をゆずり、三代坂東又九郎と改め、享保七年(1722)に没しました。したがってこの絵は又九郎時代の絵であるかもしれません。これは舞台姿ではなく、平常姿を描いた作と思われる」(吉田氏)。
その通りでしょう。付加すべき何ものも私はもち合わせません。衣紋の描写には筆線に相当の様式化があって観念的であり、面貌の細麗なのに対照的な、初代清倍特有の画態を示しており、かつまた平常姿とはいえ、劇化的なところが無くて落ちついた美感を発揮した佳品といえよう。日本蝉媚画の肩書がまた、美形描写の自信を誇示してみえます。
鳥居清倍 Torii Kiyomasu