役者絵 春章
大判錦絵 37.6×25.5 cm
落款:春章画 板元:不明
所蔵:シカゴ美術館
虹ケ嶽柚右工門と筆ノ海金右工門
統計をとってみたわけではありませんから、確言はできませんけれども、浮世絵の人物画で最も多くポピュラーだったのは、何といっても役者芝居絵であり、ついでは美人風俗画、芸能世界での人気からいうと力士相撲絵はそれに比べてはるかに少ないようです。もちろん近世初期から屏風・画巻きなどに描かれたものがあり、初期の版画にもなったようですが、錦絵時代にはいって急に増大してきたと思われます。それも春章やその門人たちの相襖絵が目立っています。
この図は東方力士関脇虹ケ嶽柚工門と前頭筆頭筆ノ海金右工門のまわしをつけた土俵上の晴れ姿で、阿州・小倉とその出身地が沓書き添えてあります。豪快な力争や巨大な体調をほこる力士たちは、美人や俳優とは別の感興であり、その風姿は肖似性描現の格好のテーマであったことも、写実画家の春章や写楽が好んで描いた理由の一つでしょう。理想化や美化が必要でなく、醜怪であっても芸術となりうるからです。
勝川春章 Katsukawa Syunsho